一般の皆さまへ 泌尿器科教室について

ごあいさつ

小林 恭
小林 恭

京都大学泌尿器科のホームページをご覧いただきありがとうございます。

泌尿器科が担当する主な臓器は、尿を産生する腎臓からその通り道である尿管・膀胱・尿道(まとめて尿路と言います)と男性の生殖に関係する前立腺・精巣・精管・精嚢・前立腺・陰茎(まとめて男性生殖器と言います)になります。副腎は尿路でも男性生殖器でもありませんが、腎臓に接して後腹膜腔に存在するため、これも泌尿器科の担当領域ということになります。

これらの臓器には腫瘍、結石、感染、炎症、形態的な異常、機能的な異常など様々な病気が起こります。それらの病気の診断から治療、ひいては治療後のフォローまで、泌尿器科は一貫して取り扱います。また、私たち泌尿器科医は一つの病気に対して、手術による外科的治療だけでなく薬物治療を中心とした内科的治療も併せてトータルにケアを行う尿路・男性生殖器のスペシャリストです。

なかでも京都大学の泌尿器科は、特にがん(悪性腫瘍)の診療に力を入れてきました。前立腺がん、腎がん、膀胱がんをはじめとする尿路上皮がん、精巣がん、その他の希少がんに対して、様々な方法を用いて治療(集学的治療と言います)にあたってまいりました。特に、体に対する負担の少ない内視鏡を用いた手術をいち早く取り入れ、その開発と実践に取り組んできました。近年では最新鋭の手術支援ロボット(ダヴィンチXi)を用いて、より精緻な手術を通じて、治療効果が高く、侵襲(身体に対する負担)が少なく、安全性の高い手術の実践を目指しています。

手術におけるロボットシステムの導入以外にも、泌尿器がんの領域は近年目覚ましい進歩を遂げています。
前立腺がんに対しては、新規の抗がん剤やホルモン治療薬、核医学的治療が続々と登場しただけでなく、個別化医療として遺伝子検査に基づくゲノム医療が導入されてきています。
腎がんに対しても多くの分子標的薬に加えて、ノーベル賞で話題になった免疫チェックポイント阻害薬が使えるようになりました。
また尿路上皮がんでも免疫チェックポイント阻害薬が使えるようになって、長きにわたって改善のなかったこの分野での治療成績が向上し、さらには抗体薬物複合体という全く新しいタイプの薬が使えるようになってきています。
このように有効な治療薬が増えてくると、それらをどのような順番あるいは組み合わせで使うかという点で、治療はより複雑化します。また、それぞれの薬剤にはいろいろな副作用が起こることもあります。このように多様化する治療を適切にマネジメントするには高い専門性が必要になりますが、京都大学泌尿器科ではそれぞれの疾患・治療に応じて経験豊富なスタッフが中心となってチームとして診療にあたる体制を備えております。

移植医療にも長年の実績があります。特に近年は腎移植の手術件数も増えてきました。長期の腎の生着率も全国トップクラスであり、腎臓内科との連携により安全で丁寧な診療をベースに長期成績のさらなる向上を目指しています。また、臓器移植医療部やその他の移植関連診療科と連携し、高難度な複合臓器移植にも取り組んでおり、京大病院ならではの移植医療を実現させています。

さらに、大学病院の大きな使命の一つとして、新しい医療の開発にも積極的に取り組んでいます。前立腺がん治療ユニット等において放射線治療科と連携し、上記の外科的・内科的治療に放射線治療を組み合わせることによって泌尿器がんの治療成績のさらなる向上に取り組んでいます。
研究面では、泌尿器がんの新たなゲノム診断をはじめとしたバイオマーカーや新規治療の開発に関する基礎的研究・橋渡し研究において全国トップクラスの実績を誇っております。また、新薬の治験、新規治療開発に向けた臨床研究も多数実施しています。これらの研究無くしては、将来の医療の進歩は望めません。ぜひ我々の取り組む最先端の医療にご興味のある方がおられましたらお気軽にお尋ねください。また我々の方からこのような研究へのご協力をお願いすることもあるかと思いますが、ぜひ将来の医療の進歩のためにご協力いただければ幸いです。