世知辛いお話

最近,大学(教室)に入ってくる企業からの寄付金が少なくなっている.これまで企業からの助成法として あった「奨学寄付金」という形態はなくなりつつあり,競争的な「研究助成金」という形態に変わってきてい る.製薬企業の臨床研究への不正な関与が明らかになり,当該製薬企業から研究担当医師の所属する教室に多額 の寄付金が入っていた事件が 1 つのきっかけになったことは間違いない.

これまでの大学(教室)の運営や研究活動は,この「奨学寄付金」に負うところが大きかった.奨学寄付金は 政治家への企業献金のように,いくら情報公開をしても不自然なお金の流れである.なくなることは必然かもし れない.しかし,大学から配分される管理運営費が貧弱なため,これまでの臨床系教室の運営には不可欠な資金 だったことも事実である.もし運営に必要なお金がすべて競争的資金でしか獲得出来ないとなると,臨床系教室 の活動に重大な支障を来たすことになる.秘書さんや実験助手さんなどは雇えなくなるだろう.電話代やコピー 代すら払えなくなるかもしれない.また学会への出張費などのサポートも出来なくなる.もし企業からの寄付金 が駄目ということであれば,その金額に見合う額の助成金を何らかの形で用意する必要があると思う.