腎移植ドナー手術

生体腎移植のドナー死亡という悲しい事故の報道があった.

記事では腹腔鏡下手術で腎を取り出す際に大量に出血したという.手で取りだしたか,あるいは採取用バックで取り出したかは不明だが,何らかの原因で大血管が損傷されたのだろう.また,開腹に移行する際には気腹圧が下がるので,さらに多くの出血を招いたことが予想される.国内ではこれまでに2 万件を超える生体腎移植が実施されているが,ドナーが死亡したのは初めてだという.

移植手術を行う際に最も気を遣うのはドナー手術である.
ある意味において泌尿器科手術の中でもっともストレスフルな手術ともいえる.私自身は毎回「無事に手術が終わりますように」と神様にお祈りして手術に望んでいる.大血管周囲を剥離する手術なのだから安全な手術とは決して言えない.

日本移植学会は「移植の根幹をゆるがす由々しき事態」「 2 度と起こしてはならない」とコメントしている.確かにそうではあるが100%安全という認識なのだろうか.原因究明は必須であるが,生体移植にはリスクが伴うということを国民全体で再度確認しなおすべきだろう.