下山の思想

五木寛之氏の「下山の思想」という文庫本を読んでいる.
彼によると,今,我が国は下山の途中にあるという.経済発展や豊かな生活という頂上を目指した登山の時代は終わり,実り多い成熟した下山を目指すべきだと述べている.

彼は下山の時こそ周りの風景を楽しむことが出来るし,下るべき道程やたどりつく場所も選ぶことが出来ると主張する.そして下ったあとは,また新しい気持ちで違う山頂を目指すことができるというのである.

もうすぐ震災後1年になる.
復興が叫ばれるなかで「下山の思想」とは受けいれにくい考え方かもしれない.
また,前向きがモットーの私には,すこしネガティブすぎるメッセージでもある.

しかし,確かに「登ったら下る」は当たり前.そして「諸行無常」は日本人の感性でもある.これまでとは少し違った価値観で,私たちの生き方を考えてみても良いのかも知れない(私もちょっと歳をとって疲れてきたのかもしれません.).