先端医療の現実

ロボット支援下の前立腺全摘術がこの4月から保険収載される.
質の高い医療を希望する患者さんにとっては朗報である.
じっさいわれわれの施設でも3月にダビンチ手術を予定されていた患者さん達は,すこし手術時期が遅れることにはなってもたいへん喜んでおられた.

ただ,やはり問題は保険点数の設定である.
前立腺悪性手術の点数(41,080点)に内視鏡手術用支援機器加算(54,200点)がついて計95,280点となった.腹腔鏡下前立腺悪性腫瘍手術(77,430点)と比較して18,000点の違いしかない.

ダビンチ手術1例にかかるディスポ費用は約25万円で,これに年間のメインテナンス費用を加えると年間100例の手術を行っても1例50万円の費用が発生する.すでに内視鏡手術用支援機器加算の額に相当しており,ダビンチ本体の原価償却はまったく出来ない.

この点数設定をみて,おそらく多くの病院が導入をためらっていると想像する.
これからどうなるのだろう.

保険収載となった以上,ロボットを保有する施設に症例があつまるに違いない.
そして持っていない施設の手術数は減るだろう.

ロボット手術の保険適応の施設基準は年間20例となっている.
手術数が減って20例以下になろうとする時,病院はどう判断するだろう.
無理をしてロボットを導入するか,ロボット手術をあきらめるか.

何故このロボット手術が保険収載されたか,私はいまだに理解できない.
国はこのような高額な高度医療のために先進医療制度を作ったのでは無かったのか.
まずは先進医療の施設基準(私費設定による2年間の手術経験)を下げるだけで,もう少し健全なロボット支援手術の導入が出来るのではないかと思うのは私だけだろうか.