神への手紙

神戸で開催された第102回日本泌尿器科学会に出席し,サイエンスレポーター竹内薫氏の「科学嫌いが日本を滅ぼす」という特別講演の座長を筧会長から仰せつかった.

何故,日本人は科学から距離を置こうとするのか.
竹内氏によると,サイエンスは欧米では善,日本では悪と捉えられているという.キリスト教では自然は完全な神が作ったもので,サイエンスは不完全な人間が神に近づくための方法とされる.いっぽう,日本では自然その~ものが神であり,それに手をつけることは許されないと思われているという.Nature 誌の original article は“Letters to Nature(自然への手紙)”として掲載される.「われわれはここまで自然を解明しました.どうでしょう.正しいでしょうか.」という神へのメッセージという意味を持っているのだろう.

そういえば,留学先のボスの自宅には 「Scientific American」 や 「National Geographic」 という科学雑誌が定期購読されていて,彼が医学のみならず動物学や海洋生物学にも興味をもっていたことを思いだす.Science そのものを楽しんでいるようだった.くしくも神戸からの STAP 細胞スキャンダルが世間をにぎわせている.神への手紙は,誠実さと謙虚さをもって書かなければならない.