旅。食にまつわる思い出

先日、初めてロシア料理を食べてきた。娘の誕生日祝いで何を食べたいか聞いたところ予想外の答えがボルシチ。何でも給食で食べて気に入ったそうだ。たまには家族で寿司か焼肉かと考えていたので拍子抜けだ。調べたところ、京都市内にロシア料理専門店は1件しかない。早速予約して行ってみることに。

祇園の鴨川が見下ろせる絶好のロケーションにその店はあった。祇園でロシア料理を食べる人がどのくらいいるのだろうと疑問に思ったが、結構賑わっている。店自体は結構な老舗なようで、なかなか趣もある。前菜からデザートまで味もなかなかのもので、飲み物もグルジアワインからウォッカのテースティングセットまで揃っており、堪能した。満足そうな家族をほろ酔い気分で眺めながら、店の異国情緒も相まって過去に色々と旅行してきた国の食について回想した。ということで、今回のテーマも昨年に引き続き旅シリーズ、今回は食について。

旅の食といえば一番覚えているのはモロッコ。バス旅の途中の掘っ立て小屋のような休憩所を含めて、どこで何を食べても美味しかった。おそらく色々と旅した中で一番食事に関しては充実していたように思う。何せ、羊肉やら野菜やらをタジン鍋に入れるだけで魔法がかかったかのように美味しくなるのだから。最近日本でも手に入るタジン鍋。何度も店頭で手が伸びかかったが、あの魔法使いの帽子のような形がネック。無駄に場所をとるので妻に怒られそうで結局今でも買えずにいる。モロッコといえばマラケシュのナイトマーケットで色々と食べたのも美味しかった。羊の脳みそなんてもう食べる機会はないだろうなぁ。

同じアフリカだが、エジプトではあまり美味しいものを食べた記憶がない。ただ、一度、友達と二人でチキンを頼んだら鶏の丸焼きが一人につき一羽ずつ出てきたのは覚えている。野菜はほとんどキュウリとトマトだったと思うが、ナイル川沿いしか緑地がない状況では仕方なかろう。そうそう、衝撃的に美味しかったのがカイロで飲んだマンゴージュース。当然ながら完熟のマンゴーをふんだんに使っているので日本ではまず味わえないほど美味しかった。調子に乗ってその後、ナイル川沿いを南下している途中に別のところで注文したところ、直前に小舟で遊覧したナイル川の臭いがする、、、氷に川の水を使っているに違いない。その時はあまり気にせずに飲み干してしまったのだが、案の定、その後下痢に苦しんだ。

トルコ料理はフランス料理、中華料理と並んで世界三大料理とされている。おそらくはオスマントルコ帝国時代の名残であろう。しかし、残念ながらトルコは大学時代に一番最初に訪れた国であり、お金もなかったので本格的なトルコ料理を食べる機会は一度もなかった。ただそれでも街中にはドネルケバブのスタンドが溢れていたし、どこで食べても美味しかった。今でこそ、東京などではケバブ屋が散見されるが、当時は日本では味わえない食べ物で何度も足を運んだ。あと、ボスポラス海峡の船着き場で漁師さんが釣りたてのサバを軽く素揚げにしてパンに挟んで売っているのだが、これは旨かった。きわめて素朴な味だが、本当に新鮮なので臭みが全然ない。エフェスビールなんかも美味しかった。トルコはヨーロッパの一部ということでいずれ何らかの学会で再訪できるのではないかと密かに期待している。今度こそは世界三大料理としてのトルコ料理を味わいたいものだ。

この他にもハンガリーでのフォアグラ尽くしやノルウェーでのトナカイ料理など、思い起こせば各地で色々なものを食してきたが、挙げるときりがないので今日はこの辺で。最近は海外といっても学会でアメリカかヨーロッパの主要都市に行くのみで、あっと驚くような食べ物に出会うことはほとんどないのが寂しい。どこか行ったことのないような国への出張はないかなぁ。

(赤松)