総会記念式典特別講演

日本泌尿器科学会の創立100周年記念式典のあと,京都大学iPS細胞研究所(CiRA)所長の山中伸弥教授の特別講演を拝聴した.

整形外科医を志したが手術に自信がもてなくて基礎研究の道に進んだこと,米国の留学から帰ってPAD (Post-America Depression)に罹ったこと,奈良先端大で研究職ポストを得たことやヒトでのES細胞の発見がPADに悩む先生を救ったことなど,すばらしい先生のお人柄がよくわかるウィットに富んだ楽しい講演だった.

講演では4つの山中因子をどのように見つけたかなどといった話はほとんどされなかった.
ごく普通の研究者が,悩みながらその道を切り開いていく過程をありのままに話されただけだった.「偶然の重なりがこの偉業をうんだ」ともとれる内容だった.

しかし,偶然を必然に変えるには,先生にしか出来ないたいへんな苦労があったに違いない.淡々とした講演だからこそ,その裏にある大きな努力と非凡な才能がいっそう鮮明に感じられた.

講演の司会をつとめられた吉田名誉編集委員長の言葉どおり,今年こそはスウェーデンからの電話がかかってきてほしい.