泌尿器科 まつわる話 (1)

泌尿器科に関連する病気にかかった有名人は、もちろん世の中にたくさんおり、それぞれの闘病の記録には端倪すべきドラマが含まれています。

聖(さとし)の青春その中で最近読んだドキュメンタリーを1冊紹介したいと思います。
「聖(さとし)の青春」(大崎善生著・講談社文庫)です。

主人公は村山聖。広島に生まれ、幼少時から重度のネフローゼに苦しみつつも、将棋に目覚めて名人を目指すことのみを生き甲斐として15歳で関西奨励会に入会、当時のスター、谷川浩司や羽生善治らとしのぎを削りつつ神懸かり的な勝率でもってA級8段(将棋界のトップ10)に上り詰めるも、27歳で膀胱癌と診断され、腎尿管膀胱全摘を行うも翌年再発。29歳でついに名人位に挑戦することかなわず世を去ってしまうという人物。

僕自身小学生の頃には谷川や羽生といったスターの活躍を本で読みながら将棋道場に通っていた時期もあり、当時の雰囲気を思い出しながらとても懐かしく読みました。村山さんのこと自体は残念ながらほとんど知らず、 ちょうど僕が医師になった直後ですが、将来有望な棋士が泌尿器癌で亡くなったというニュースを見た覚えがある程度でした。

ネフローゼが基礎疾患だったせいか、血尿がみられていたにも関わらず癌の発見が遅れたとの記載もあり、悔やまれるところではありますが、そういった専門的な内容はともかく、「命を削って名人を目指す」という生き方が比喩でなく全うされたことは、とにかく読むものの心を揺さぶるものだと思いました。
是非ご一読をおすすめしたいと思います。

次にまたこのブログに書く機会がありましたら、また何か泌尿器科にまつわる話を用意したいと思っております(杉野)。