UAA2015印象記

2015年9月3日から6日まで中国・上海のShanghai International Convention Centerで開催された13th Congress of Urological Association of Asia 2015に参加しました。本総会のテーマは”Asian Urology, The World’s Future”で、 Chinese Urological Association(CUA)の第22回総会とのジョイント開催でした。CUAは約3万人(!)の会員がおられるとのことで(それでも人口比にするとまだ少ないとも考えられますが)、学会は中国国内からの参加者を中心に活気に満ちておりました。

学会発表は基本的に9割がたが中国語によるCUAのセッション で、プレナリーセッションの一部とUAA symposiumや他の学会(European Association of Urology、Asia-Pacific Society of Uro-oncologyなど)とのジョイントセッションなど各時間帯に1-2列程度の国際シンポジウムが同時進行されているという構成でした。

驚いたのが、すべての英語セッションで演者のスライドを事前に提出させた上で学会スタッフによって中国語に訳されており、前方2つのスクリーン向かって左が英語のオリジナルスライド、右側が中国語訳のスライドという形式が徹底されていたことです。事前にスライドを集めて中国語版を作成するという作業は大変な労力だったのではないかと思いますが、ヘッドセットと同時通訳を用意するのに比べれば経費的には安上がりなのではないかとも思われました(そのかわり特に直前の数日間、担当者は徹夜で血反吐をはきながらスライド作成に追われたことは想像に難くない)。最も重要視すべき参加者の理解の助けという点ではどちらの方法がよりよいのか気になるところです。

個人的には”Biology and Therapy of Urologic Cancer Metastasis”というセッションで”Research for Prostate Cancer Metastasis Using Mouse Models”と題した口演発表の機会をいただきました。前立腺癌の転移におけるRANKLの果たす役割に関する研究で有名なCedars-Sinai Medical CenterのDr.  Leland Chungや膀胱癌のジェノミクスの研究で大きな業績をあげておられるMD Anderson Cancer CenterのDr. David McConkeyらと意見交換できたことは大変有意義でありました。

学会全体を通して、UAA関連のセッションはかなり限られていて若干寂しい感じもしましたが、その分どこに行ったらよいか迷うこともなくかえってアジア各国からの参加者にとっては分かりやすかったとも言えるかもしれません。

演題登録が学会の2ヶ月前にオープンして、1ヶ月前に締め切られる、口演発表の依頼が2週間前に舞い込んでくる、ポスターのフォーマットがアナウンスされるのも2週間前、抄録集によれば47のポスター発表があるはずでしたが、実際に掲示されていたのは18枚だけで、そもそも47枚分の掲示スペースもポスター掲示用のピンも準備されていないなど、UAAならではという「ゆるさ」も随所に見られましたが、これも毎度感心させられる柔軟な対応で切り抜けている印象でした。

2年半後の2018年春には京都でUAA2018が第106回日本泌尿器科学会総会とジョイント開催されることが決まっています。日本全国の日泌会員とアジア各国からのお客様をお迎えする側に立つ身として、今回のような学会に参加する際の目線も自ずと変わってきます。セッションの構成をどのようにするか、国際学会としてどのような細かいサービスが求められるかなど多くの課題をクリアしていかねばなりません。学会開催までに余裕を持ったスケジューリングで周到に準備を進めていく必要がありますが、逆にUAA特有の柔軟性に慣れているであろうアジア各国からの参加者がそれに合わせてもらえるかどうかという点にも不安を禁じ得ません。

国際学会のジョイント開催は異文化交流の場でありますが、異文化との折衝は準備段階から始まっています。それも含めて国際学会の醍醐味として楽しんでいけたら、そしてその結果として国内外からの参加者の皆さまにとって有意義な学会にしていけたらと考えております。皆さまの暖かいご支援・ご協力をお願いいたします。

会場入り口にこれまでのUAA総会の歴史が一目で分かるパネルが並ぶ。第1回は1990年福岡で開催された。

プレナリーセッションの会場の様子。前方複数のスクリーンにはオリジナルの英語版スライドに加えて中国語訳版のスライドが用意されていた。担当者の労力は並大抵ではなかったと慮られる。

セッションの最後にModulatorのDr.  Leland Chung(左から2番目)や Dr. David McConkey(同3番目)らと記念撮影。ディスカッションも大いに盛り上がりました。

上海の夜景。浦江に浮かぶ遊覧船の光が水面に映える。

妖しく(?)光る上海オリエンタルパールタワー

(小林)