絵を描く

「外科系医師は、絵を描きます。」というと不思議に思われるかもしれませんが、本当です。

我々は、手術を行ったあとに、手術記録(通称:オペレコ)というものを症例ごとに作成します。オペレコでは、手術時間や術式の詳細などを記載していきます。

そのオペレコの記載項目の一つに、描画による手術所見の記載というものがあります。紙カルテではなく電子カルテが主流となり、術中の映像が比較的容易に保存できるようになった近年では、その重要性は以前ほどではないかもしれません。しかし、我々は特に教育という観点からは、この「しっかり絵を描く」ということが非常に重要であると考えています。「しっかり絵を描く」ことで、解剖学的理解や症例ごとの術式の工夫の理解が深まるからです。

そのため、毎年、泌尿器科で研修する先生方には手術の翌朝までに、頑張って絵を描いてもらっています。絵の描き方などに制約はないので、「手術中のどの場面をどの様に描くか」に描き手の個性が出て、絵の上手い下手に関わらず非常に興味深いです。特に年度初めは、時空が歪み芸術が爆発している絵や解剖学的にあり得ない絵、見えるはずのないものを描いてしまっている絵など、様々な絵に出会えます(笑)。非常に個性的な絵を描き「画伯」とか「鬼才」とか呼ばれる先生もおられます(画力は様々ですが、どの先生もトレーニングを積めば、だんだんとポイントをつかんだ絵が描けるようになっていきます)。

話は変わりますが、先日、5歳の娘が父の日に絵を自信満々にプレゼントしてくれました。タイトルは「公園にいるお父さん」だそうです。太陽と木とブランコも描いたようです。解剖学的な珍妙さや見えるはずのないものを描いてしまっていること(私のヒゲはあごヒゲだけ)に加えて、5歳とはいえ画力のアヤシさが気になります。にもかかわらず、「実は全体的には色のバランスもまとまっているように見えるな。我が家の画伯は、もしかしてセンスあるのかも?宝物にしよう。」と思っているのは完全に親バカです。

後藤