ブータンを訪れて

久々にブログを書く順番が回ってきました。
昨年はブータンに医療支援で3か月行かせてもらい、とてもいい経験をさせていただいたので、それについて少々触れてみたいと思います。

行くのにまず予防接種が大変でした。注射をブスブス何回も打たれましたが、野良犬がたくさんいるので、狂犬病のワクチンは打っておいたほうが安心できます。飛行機はバンコク経由で、夜中出発翌日朝に到着します。ついてみると日本語が流暢なガイドさんがアパートへ連れて行ってくれて、意外と都会って感じでした。固定電話はありませんがみんな4Gのスマホ使っておられます。手術中もひっきりなしに医者に電話がかかってきて大変そうです。食事に関しては、ブータン人はお米が大好きでみんな大飯喰らいです。それにエマ唐辛子が大好きで、すべてが辛い!でも3か月いれば慣れることができます。慣れると結構おいしいですね。また食べたいなあと思います。自炊はインスタントラーメン程度でしたが、一緒に行った消化器内科の辻先生が無類のラーメン好きで、アパートで天下一品そっくりのラーメンをスープから作られたのはすごかったですね。鶏が4時間ゆでると跡形もなくなるのかっ‼とびっくりしました。

仕事は9時ごろから15時ごろまでです。「ごろ」というのは、レジデントは日本よりも朝早くから夜遅くまでいますが、スタッフはいつ来ていつ帰っているのかよくわからなかったからです。外来はめちゃめちゃ混雑しています。国中からこの首都の病院へ数日かけてみなさん来られています。みんな大変です。カルテは全部自分持ちで持ち歩いているので、病棟や廊下でも医者に声をかけて診察をせがまれます。相手がみつからないと日本人の私でも声をかけられます。手術も数はたくさん予定されますが、麻酔科が不足していて全部の手術が終了できないことがままありました。日本では考えられないことですが、手術予定で入院したのに手術せずにいったん退院させられてしまう患者さんもおられます。難易度の高い手術は不可能で、インドなどへ国費で送られます。外科医の数も圧倒的に不足しており、泌尿器科に至っては国に一人しかいません。でも、このひとりがスーパードクターで、どんな手術でもやってしまう人でした。泌尿器科手術だけでなく、ラパ胆やERCPまでこなせてしまう人で、ブータンでも有名人です。隙を見つけては、地方へsurgical campへ行って無料奉仕されてました。いずれえらい政治家になるのではないかと思います。とても尊敬できる人です。

帰国してみて、ブータンに貢献したことより、自分がいろいろと教えてもらったことのほうがはるかに大きいことに気づかされます。ルーティーンワークでややもすると機械的になりがちな大学病院での業務ですが、「幸せの国」の気持ちを忘れずにやっていきたいですね。(松井)

(写真はアパートからの首都ティンプーの風景:中央の緑の屋根の建物群が今回お世話になったJDW病院。)