住めば都

初めまして。2019年8月から助教として働いている佐野と申します。それまで2年あまりカナダに研究留学させていただいていました。せっかくですので、そこで感じた日本との文化(というか人々の気質)の違いについてお話してみたいと思います。私が生活したのはバンクーバーという西海岸に面した町で、2010年に冬季オリンピックが開催された町としてご存知の方も多いと思います。緯度が樺太の真ん中ぐらいの高さであり、さぞかし寒かろうと思われるかもしれませんが、海流の方向のせいか冬は氷点下5度程度までしか下がらず、街中には雪かきしなければならないほど雪が降ることは滅多にありません。また、夏は30度ぐらいまでしか上がらず湿度がとても低い、という素晴らしい気候の場所です。移民が多いからか、気候が穏やかだからか、人々の気性もおおらかです。いくつか日本人との気質の違いに驚いたことを紹介します。

①バスの運転手はシフトの時間が過ぎると、その最寄りの駅か車庫で客を降ろして、そそくさと帰ってしまいます。次のバスが30分以上来なかろうが関係ありません。日本では大ブーイングでしょうが、文句を言っている乗客を一度もみたことがありません。おおらかかどうかより、シフトが終わったらどのような状況であれ帰るのが当然、という感覚があるかないかの違いでしょうか。

②乗用車運転中のことです。日本では直進が赤になった後に右折の矢印信号が青になりますが、あちらでは左折の矢印信号(カナダは右側通行のため)が先に出ます。それを知らずに誤ったタイミングで交差点に進入してしまい、四方からの往来のすべてを塞ぐ場所で立ち往生してしまいました。猛烈にクラクションを鳴らされると覚悟しましたが、対向車線の車も左右の車も止まったまま待ってくれ、無事通過できたときには歩道の人まで満面の笑顔で親指を立てて祝ってくれました。日本に戻ってからはクラクションを一度も鳴らしていません。そもそも「はよ行けゴルァ!」という鳴らし方は道路交通法違反です。

一方で独特のキレポイントがあり、運転中に赤信号の停車が遅れて横断歩道に車体が少しでも重なると、横断する歩行者にボンネットを叩かれたり、車の横腹を蹴られさえすることもあります。

気が付いたら交通に関することばかり書いてしまいましたが、いろんな場面でさまざまな違いに気づかされ、とても貴重な体験だったと思っています。いずれにしても住めば都とはよく言ったもので、行く前はどこにあるかも知らない町だったにもかかわらず、いろんな体験がたった2年余りの滞在に凝縮され、今では第二の故郷のような気すらしています。

佐野

2年あまりでみた中で最高の景色のひとつ(カナディアン・ロッキーのバンフという町にあるルイーズ湖)