一般の皆さまへ あつかう主な病気

副腎腫瘍

はじめに

はじめに

副腎とは?

副腎(ふくじん)は通常は2~3cmの小さな臓器で、ほぼみぞおちの高さの背中側、左右に1つずつあります。両側とも腎臓と同じ"後腹膜腔(こうふくまくくう)"にあり、腎臓に接して少し上に存在することからこの名前がありますが、働きは全く違います。その働きとしては主に、内分泌臓器として、体の種々の指令のもとさまざまな"ホルモン"という物質を分泌し、体の恒常性(こうじょうせい:ある一定のバランスを保つこと)や血圧の調節を行っています。

副腎腫瘍の種類は?

副腎の中の細胞の一部が勝手に増殖し腫瘍を形成した状態を副腎腫瘍といいます。副腎の中にはもともと、役割の異なる多くの細胞がありますので、増殖した細胞の性質によって症状が異なってきます。たとえば、皮質という部位の細胞が増殖した場合に副腎皮質ホルモンが体内を過剰に循環して引き起こす「クッシング症候群」と呼ばれるものや、同じ副腎の皮質の細胞でも「アルドステロン」という血圧を調節(上昇)する物質が過剰に産生される「原発性アルドステロン症」と呼ばれるものがあります。また副腎髄質という部位の腫瘍では「褐色細胞腫(かっしょくさいぼうしゅ)」と呼ばれ、アルドステロンとは違う「アドレナリン」という物質が多くなり高血圧を引き起こすものがあるなど、その症状はさまざまです。一方、腫瘍がありながらどの物質も過剰ではなく症状をおこさないものもあります(無機能性)。また、副腎腫瘍のなかには、副腎がんや他のがんが副腎へ転移したものなども含まれます。

検査と診断

検査と診断

副腎腫瘍の検査と診断は?

人間ドックや他の疾患の検査中にたまたま見つかることが増えていますが、この場合は多くが症状のない「無機能性腫瘍」です。一方、高血圧などの詳しい検査で、血液中に副腎から分泌される物質の量が多い場合、副腎の画像検査(CT検査など)が行われることがありますが、その際に副腎に腫瘍が見つかりますと、その腫瘍によって症状を起こしている可能性が高くなります。ただ、確定診断にはさらに詳しいホルモンの検査を必要とすることがあり、カテーテル検査などを行う場合もあります。当院では内科や放射線科と密に連携をとって、その診断にあたっています。

治療

治療

副腎腫瘍の治療は?

副腎腫瘍が原因で高血圧などの症状を起こしている可能性が高くなれば、腫瘍を手術的に摘出することが検討されます。ただ副腎はその位置する場所が体の非常に奥深くであるため、2~3cmの小さな臓器であるにもかかわらず、以前の開腹手術では手術の傷跡が大きくなるのが問題でした。最近では内視鏡を使った「腹腔鏡手術」が主流となっており、その問題はずいぶん改善されています。副腎の場合、取り出す臓器(腫瘍)が小さいのでまさに理にかなった方法といえます。ただ、腫瘍が原因と断定できない場合や、腫瘍の存在や位置がはっきりしない場合には、症状の程度によっては内科的治療(お薬)が選択される場合もあります。泌尿器科では副腎腫瘍の手術治療を主に担当しています。

副腎腫瘍に対する腹腔鏡手術の実際

径1cmほどの細長い内視鏡を腹腔内に入れ、細長い手術道具を用いて行う方法です。外科分野では「胆石(たんせき)」の治療としての「胆嚢摘出術」がこの方法で盛んに行われています。傷が大きくなく(例えば左副腎摘出術では通常、おへそ付近に約2cmの傷と、みぞおち近くの横腹にそれぞれ1cmと5mmの傷がつくだけでできることがほとんどです)、患者さんの手術後の回復も早いため、低侵襲(ていしんしゅう)治療として注目されています。

京都大学泌尿器科では早くからこの方法を取り入れ、日本におけるこの手術方法の確立に寄与してきたと自負しております。現在では副腎の腹腔鏡手術は保険適用となり、副腎腫瘍のスタンダードな治療法となっています。ただし、以前にお腹の手術を受けておられる方など、患者さんの状態によってはこの術式を行うことが難しい場合もありますので、詳細は担当医師にご相談下さい。

予後と療養

予後と療養

副腎腫瘍の手術後の経過は?

副腎腫瘍の種類によっては、手術後の一定期間はホルモンを補う必要があります。また、腫瘍の種類によっては、再発する場合があります。当院では内科と連携してそのフォローを行っています。

詳細は担当医師にご確認ください。