一般の皆さまへ あつかう主な病気

腎移植

はじめに

はじめに

腎不全とは

「腎臓のはたらきが低下し、体内の老廃物のろ過や水分・塩分の摂取などが十分に行えない状態」をいいます。初期では大きな自覚症状はありませんが、徐々にむくみ、高血圧、貧血、吐き気、さらには意識障害に至る尿毒症や水分過剰に伴う呼吸困難や心不全が起こり、治療せずに放置すると死に至ります。

治療

治療

進行した慢性腎不全の治療法には

透析療法(血液透析・腹膜透析)と腎移植があります。
血液透析は1回3~4時間かかる透析を週2~3回病院で受ける治療を一生続けなければなりません。また、腎機能をすべて補えるのもではないので、食事や水分の厳しい制限が必要となります。期間が長くなると心臓・血管・骨などの合併症が生じます。
腎移植は失われた腎臓の機能を提供された健康な腎臓によって再生させる治療法で、現時点では末期腎不全の根本的治療法と言えるものです。
腎移植を行うと、老廃物や余分な水分が移植された腎臓から自然に排泄され、全身の状態も安定します。透析治療から解放され、水分・食事の制限も緩和されることにより、生活の質は大きく改善します。しかし、腎移植は全身麻酔下での比較的大きな手術が必要となります。また、提供された腎臓の拒絶反応が起こらないように免疫を抑える薬を一生飲み続けなければなりません。拒絶反応・感染症・免疫抑制剤の副作用などの合併症が起こる場合があり、一部の方においては、腎機能が悪化し再び透析に戻ることがあります。

腎移植には

家族など健康な人から提供された腎臓を移植する「生体腎移植」と、死後善意により提供された腎臓を移植する「献腎移植」があります。

生体腎移植は

主に身内の方(血縁6親等以内・姻族3親等以内)で腎臓を提供して下さる方(ドナー)から、2つある腎臓のうち1つを頂いて、患者さん(レシピエント)に移植する方法です。提供者の方の安全性が確保されることが絶対条件であり、そのために必要な検査を受けていただきます。現在は血液型が同じでなくても、免疫抑制剤や血漿交換などにより拒絶反応のリスクを低くして、腎移植は可能となっています。

献腎移植は

脳死または心停止の方から腎臓の提供があった場合にその腎臓を移植する方法です。臓器移植ネットワークに登録していただき、選定までの期間を待機していただくことになります。選定の連絡があれば、緊急の手術となるため、いつ手術になっても良いように日ごろから体調を整え、移植に対する心構えを持ち続けることが必要です。

レシピエント手術(移植手術)

腎移植の手術は、提供された腎臓を本来の腎臓の場所ではなく下腹部の右ないし左の位置に移植します。膀胱に近く皮膚の上から触れることができます。元の腎臓にはほとんどの場合そのままにしておきます。術前1週間、術後約3~4週間の入院となります。

レシピエント手術(移植手術)

ドナー手術(体腔鏡下腎採取術)

全身麻酔下で内視鏡を用いて、一般的には左の腎臓を摘出します。手術後5~7日で退院可能となります。腎機能は術前に比べてやや低下しますが、何らかの運動制限が発生することはありません。しかし、1つになった腎臓を大切に守っていくために、術後定期的に受診していただき、腎機能を悪化させる要因となる高血圧や肥満、糖尿病、高脂血症などに気をつけ、喫煙はしないようにしましょう。

予後と療養

予後と療養

移植後の経過

拒絶反応を予防するための免疫抑制剤と感染予防のための薬を服用しますが、頻回に腎機能・薬の血中濃度などのチェックのための血液検査を行います。移植後3~4ヵ月までは特に注意が必要な時期であり、週1回の通院になります。自宅での規則正しい服薬と、体温・血圧・体重を毎日測定し、手洗い・うがいなどの感染予防にも心掛けていただくことが大切です。6ヵ月~1年経って、腎機能が安定してくると月1回の通院になりますが、移植後1年以上経過した後も、慢性拒絶反応や薬の毒性、原疾患の再発などの注意が必要であり、生活習慣病や成人病への対策も大切で、健康管理に気を配り検診を受けましょう。

腎移植をしても残念ながら100%の患者さんが一生にわたって透析を離脱できるわけではありません。拒絶反応等によって移植した腎臓の機能が悪化し、透析を要する状態になる可能性もあります。2000年以降に京大病院で生体腎移植を行った患者さんの生着率(移植した腎臓が機能して透析をせずにいられる割合)は、移植後5年で93%、10年で83%です。

生着率

お問い合わせ

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腎移植に関するお問い合わせ

京大病院移植情報室
TEL:075-751-3243
FAX:075-751-3245